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アキ・マケライネンと検索した日|西加奈子『夜が明ける』

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西加奈子さんの『夜が明ける』を読んでみました。

chaco

西加奈子さんの本を読んで面白いと思ったら負けだと思っていました。
しかし、今回私は「アキ・マケライネン」と検索してしまったのです!

2021年本屋大賞の候補にも選ばれた西加奈子さんの本です。

前作から5年ぶりに完成した西加奈子さんの長編小説です。

目次

「アキ・マケライネン」と検索した日

スマホで検索

意地を張って西加奈子さんの本は読みたくないと思っていた気持ちはなんだったんだと思いました。

西加奈子さんはもっと大きな、でも個人個人の気持ちを大事にしてくれているのだと思います。

最初「アキ・マケライネン」のことは気になったけれども、検索しませんでした。

chaco

絶対に検索なんかしないぞ!

しかし、10ページ目

「きっと今、あなたはGoogleでマケライネンの画像を検索しているだろう。」

この一文で、スマホを開きました笑

「アキ」は「俺」に「アキ・マケライネンに似ている」と言われたことで人生が変わりました。

本当に些細なことでそれまでの考え方やそれからの人生は変わります。

特に思春期には、大きく変わってしまうようなことがままあります。

それは、一緒に学校生活を過ごす友達だったり、家族だったり。

10年、20年経とうとも幼い頃の生活、環境は影響してるんだなと思いました。

chaco

(良い意味でも悪い意味でも)

自分の力ではどうしようもできないことってたくさんあります。

周りから見れば壮絶なだけの人生でも本当に小さいことが救いになっていることだってあります。

彼らがほんの一瞬でも楽しいと感じる瞬間があって良かったなと思います。

結果的に「勝ち負け」ではなく、「正解不正解」でもなく「優しさ」が残りました。

大変な時、辛い時、苦しい時、誰かに助けを求めても良いんだよ、というメッセージ。

『夜が明ける』は、読む人の境遇によって感じ方は変わってくると思います。

どこに注目するかも違うと多います。

実際にあったニュースなども書かれていたり、その年をリアルに感じることができました。

西暦が出てくるとつい、自分はその時、何歳だったのかを調べてしまうのです。

そこに、フィクションなのにノンフィクションのような重さを感じました。

アキ・マケライネンのおかげで私も『夜が明ける』を楽しむことができました。

そして西加奈子さんへの興味がとても大きいものとなり、素直にすごいなと思えました。

「読んだら負けだ」という気持ちは今となっては少し恥ずかしいですが笑

西加奈子『夜が明ける』あらすじ

西加奈子の本

これはどこにでもいる少年とその友人の高校生での出会いから33歳になるまでの物語です。

主人公の「俺」が出会ったのは体が大きくフィンランドの俳優に似た深沢暁(ふかざわあきら)。

「俺」はその俳優「アキ・マケライネン」のことを父が持っていたビデオで知ります。

深沢暁はひどい吃音で母親からはネグレクトされていました。

もちろんそんなことを「俺」は知るよしもありません。

それまで「でかい空気」だと思っていた深沢暁と2人になる時がありました。

「お前はアキ・マケライネンだよ」気づまりを感じた「俺」はそう言います

それが深沢暁の人生を大きく変えることになるのです。

深沢暁を「アキ」と呼ぶようになります。

それまでなんとなくよく分からずに近寄りがたかった「アキ」は基本的にはとても良い奴。

なので、あっという間にクラス、学校中の人気者になりました。

chaco

この時「俺」と「アキ」が楽しそうに
過ごしてくれていることが救いです泣

高校2年生の時に「俺」の父親が事故で亡くなります。

そこから今までとは違った生活、想像もしなかった将来への不安を抱えることになりました。

アキはアキでお母さんとの関係に怯えつつもお母さんしかいないという環境で過ごします。

2人は貧困との戦いを意図せず強いられることになります。

そしてそれでも社会に出るまでは希望に満ち溢れていたと考えられます。

「俺」は就職活動をマスコミに絞り、社会の不正や貧困を取り上げる報道マンに。

「アキ」は「アキ・マケライネン」のような大きくて強い俳優に。

それぞれの道を歩み出しますが、さらなる困難が2人を待っているのです。

chaco

ここからはさらに暗い内容になっていきます
しかし、同情という言葉は出てきません
自分もいつ同じようなことになるか分からない
という気持ちになりました
そして、同じようになっていた可能性もあるんだなと

2人はあまり連絡を取ることはありませんでした。

話の合間合間に日記の文が挿入されています。

終盤に差し掛かり、ひょんなことから再び「俺」と「アキ」を繋げるものが出てきます。

chaco

そこからは一気見です!

辛いことばかりではなかった、救いがあったんだと思わせてくれる最後になっています。

「夜が明ける」から考える子を所有物だと思っている親のこと

『夜が明ける』を最初に開くと3人の人の言葉が載っています。

その最初のカリール・ジブランさんの「預言者のことば」からの引用がとても素敵でした。

この言葉は、きっと子どもが産んだことで発しても良いと思える言葉のように感じます。

実際は子どもを産んでいなくても実感できる気持ちです。

実感できる人もたくさんいるという感じでしょうか。

子どもを産んだのは自分だと、その子を自分の所有物のように扱う親がいます。

その子の感情や感覚や思考を無視して自分の思い通りになることが当たり前だと思っている親が。

個人的には子どもを産んでいる人よりも子どもを産んでなくても育てあげた人の方が立派だと感じます。

子育てをしているとつい、自分の思い通りにならないとイラついてしまうことも。

そんな時に「預言者の言葉」を思い出して、心を落ち着けたいです。

終わりに

読み終わった後、私に残った感情は、「西加奈子さんすごい!」でした。

暗いですが、すごく好きな暗さでした。

現実的な与えられた環境とその中で起こる少しの楽しいこと。

個人的には「男たちの朝」の本当のタイトルが「夜が明ける」だったというのが好きです^^

読み終わった後に一呼吸おいて「あ、これって…そういうことか」みたいな発見も楽しい小説です。

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